チェンマイの寺院・旧市街ガイド
「北方のバラ」に残る300の祈りの場
チェンマイは1296年、メンラーイ王がランナー王朝の首都として建設した古都だ。以来700年以上の歴史を持ち、市内とその周辺には300を超える仏教寺院が点在している。バンコクの華やかな寺院とは趣が異なり、チェンマイの寺院はランナー様式と呼ばれる独自の建築が特徴。二層・三層に重なるチーク材の屋根、落ち着いた色調の仏堂、静かな境内が、この街の寺院巡りを特別なものにしている。
旧市街は約1.5km四方の堀と城壁に囲まれたコンパクトなエリアで、主要な寺院の多くが徒歩圏内に集まっている。半日あれば主要寺院を回れる歩きやすさが、チェンマイ観光の大きな魅力だ。
必見の寺院

ワット・プラシン(Wat Phra Singh)
チェンマイで最も格式の高い寺院。1345年にランナー王朝第5代パーユー王が建立した。旧市街の西端、ラーチャダムヌーン通りの突き当たりに位置し、サンデーマーケットのルート上でもある。
見どころはライカム礼拝堂に安置されたプラシン仏(獅子仏)と、堂内の壁面を埋め尽くすランナー時代の壁画。壁画には当時の人々の暮らしが描かれており、歴史資料としても貴重だ。黄金の本堂とランナー様式の建築群が美しく、写真映えする境内でもある。
- 拝観料: 境内は無料。本堂の内部拝観は20バーツ程度(変動あり)
- 営業時間: 6:00〜18:00(本堂は5:30〜19:30との情報もあり)
- 所在: 旧市街西側、ラーチャダムヌーン通り沿い
ワット・チェディルアン(Wat Chedi Luang)
旧市街の中心に立つ巨大な仏塔(チェディ)が圧巻の寺院。1441年に建てられた高さ約80mのチェディは、1545年の大地震で上部が崩壊し、現在は約60mの姿で残っている。崩れたままの姿がかえって歴史の重みを伝え、チェンマイを象徴する光景となっている。
かつてバンコクのワット・プラケオにあるエメラルド仏がここに安置されていた時期がある。境内にはその複製が祀られている。夕暮れ時のライトアップが美しく、日没前後の訪問がおすすめだ。
- 拝観料: 外国人40バーツ、子ども20バーツ(タイ人は無料)
- 営業時間: 6:00〜18:00
- 所在: 旧市街の中心、プラポックラオ通り沿い
ワット・チェンマン(Wat Chiang Man)
1296年の建都と同時に建てられた、チェンマイ最古の寺院。メンラーイ王が都の建設を監督するための仮の住まいとして使った場所に建立された。旧市街の北東部にあり、他の有名寺院に比べて観光客が少なく、静かに参拝できる。
最大の見どころは「チャーン・ロム・チェディ」(象の仏塔)。四角い基壇の上に15頭の象の彫刻が並び、仏塔を支える構造は圧倒的な存在感がある。小さな礼拝堂には、チェンマイで最古とされる水晶の仏像と、1,800年以上の歴史を持つとされる石造の仏像が安置されている。
- 拝観料: 無料(寄付歓迎)
- 営業時間: 6:00〜17:00
- 所在: 旧市街北東部、ラーチャパーキナイ通り沿い
ワット・プラタート・ドイステープ(Wat Phra That Doi Suthep)
チェンマイ市街の西方、標高1,080mのドイステープ山頂に建つ黄金の寺院。チェンマイのシンボルとして「ドイステープに行かなければチェンマイに来たことにならない」と言われる。1383年の創建で、山頂から眺めるチェンマイ市街のパノラマは格別だ。
山門から本堂まで306段の階段(ナーガの階段)を登るか、ケーブルカーを利用する。山頂の黄金の仏塔を中心に、テラスからの眺望、境内の仏像群、鐘を鳴らす回廊と見どころが多い。午前中の早い時間は霧が晴れやすく、展望がよい。
- 拝観料: 外国人30バーツ
- ケーブルカー: 往復20バーツ(合計50バーツ)
- 営業時間: 6:00〜18:00(ケーブルカーも同様)
- アクセス: 旧市街からソンテウ(赤い乗合トラック)で約40分、片道30〜40バーツ/人。チャーン・プアック門付近やチェンマイ大学前から乗車可能。人数が集まってから出発するため待ち時間あり
ワット・スワンドーク(Wat Suan Dok)
旧市街の西、ステープ通り沿いに広がる「花園の寺院」。14世紀にランナー王朝の王族の庭園跡に建てられた。境内に並ぶ白亜の王族の墓塔群が特徴的で、夕日を背にした白い仏塔のシルエットは息を呑む美しさだ。
毎週月・水・金曜に英語での「モンクチャット」(僧侶との対話プログラム)を開催しており、タイ仏教について直接話を聞ける機会として旅行者に人気がある。
- 拝観料: 無料(寄付歓迎)
- 営業時間: 6:00〜18:00
- 所在: 旧市街の西側(城壁外)、ステープ通り沿い
ワット・ウモーン(Wat Umong)
ドイステープ山の麓の森の中に佇む「トンネル寺院」。14世紀に瞑想修行のために掘られたトンネル状の通路が残り、他のどの寺院とも異なる雰囲気を持つ。観光地化されておらず、森と池に囲まれた境内は静寂そのもの。瞑想体験プログラムに参加する外国人も多い。
- 拝観料: 境内は無料、トンネル部分は20バーツ
- 営業時間: 5:00〜20:00
- 所在: 旧市街の西方、ドイステープ山麓(旧市街からソンテウで約15分)
旧市街の歩き方
旧市街は約1.5km四方の正方形のエリアで、周囲を堀と城壁の遺構が取り囲んでいる。東西南北に5つの城門があり、最も有名なターペー門(東側)が旧市街散策の起点になる。ターペー門前の広場はソンクラーンやロイクラトンなどのイベント会場にもなる。
旧市街内は基本的に徒歩で回れる。主要寺院間の距離は500m〜1km程度で、寄り道しながらでも十分歩ける。暑さ対策として、午前中か夕方の涼しい時間帯に歩くのがよい。日傘と水は必携。旧市街内のコンビニ(セブンイレブン等)はいたるところにあるので、水分補給には困らない。
移動手段としては、旧市街内ではレンタサイクル(1日50〜100バーツ)が便利だ。堀沿いのソンテウ(赤い乗合トラック)は一律30バーツ程度で利用でき、旧市街外のドイステープやワット・ウモーンへの足にもなる。
三王像広場(旧市街の中心)はランナー王朝を建国した3人の王の像が立つ場所で、ワット・チェディルアンのすぐ近く。この広場を起点にすると東西南北どの寺院にもアクセスしやすい。
サンデーマーケットとサタデーマーケット

サンデーマーケット(日曜日のウォーキングストリート)
毎週日曜の17:00〜22:00頃、ターペー門からラーチャダムヌーン通りを通ってワット・プラシン方面まで続く、チェンマイ最大規模のナイトマーケット。通り沿いの寺院の境内も屋台や出店で埋まり、旧市街全体が巨大な市場と化す。
手作りの雑貨、ランナー様式のテキスタイル、ナチュラルソープ、絵画など、質の高いハンドメイド商品が多いのが特徴。屋台飯のレベルも高く、カオソーイ(北タイカレーヌードル)やサイウア(北タイソーセージ)を食べ歩きできる。19:00〜20:00がピークで最も混雑する。
サタデーマーケット(土曜日のウアライ通り)
毎週土曜の17:00〜23:00頃、旧市街南側のチェンマイ門から延びるウアライ通りで開催される。サンデーマーケットより規模はやや小さいが、銀細工の工房が多いウアライ通りらしくシルバーアクセサリーの出店が充実している。日曜より混雑が少ないため、ゆっくり買い物したい人にはこちらがおすすめだ。
チャーン・プアック門の屋台街
北門(チャーン・プアック門)の周辺では毎晩17:00頃から屋台が出る。カオカームー(豚足煮込みご飯)の名店があり、地元民も多く訪れるローカルな雰囲気。マーケットの開催曜日に関係なく毎晩営業しているのがありがたい。
寺院でのマナー
タイの寺院は神聖な場所であり、観光客にも一定のマナーが求められる。チェンマイの寺院は比較的おおらかだが、以下は守るべき基本ルールだ。
- 服装: 肩と膝を覆う服装が必須。タンクトップ、ショートパンツ、ミニスカートでは本堂に入れない。ドイステープ寺院は特に厳しく、入口でチェックされる。羽織りものやストールを1枚持ち歩くと安心。一部の寺院では貸出用の布が用意されているが、確実ではない
- 靴: 本堂や礼拝堂に入る際は必ず靴を脱ぐ。入口付近に靴置き場がある。脱ぎやすいサンダルが便利
- 写真撮影: 境内での撮影は基本的に許可されているが、本堂内部の仏像前では禁止されている場所もある。「No Photo」の表示に従うこと。三脚やドローンは不可
- 仏像への敬意: 仏像に背を向けてのポーズ写真、仏像に触れる行為、仏像より高い位置に立つことは厳禁
- 女性は僧侶に触れない: タイ仏教の戒律上、女性が僧侶の体や衣に触れることは禁じられている。物の受け渡しも直接行わない
- 足の裏を仏像や人に向けない: 座る際は正座か横座りで、足の裏が仏像の方向を向かないよう注意
おすすめの回り方
半日コース(3〜4時間): 旧市街の三大寺院
- ターペー門 を出発点に、ラーチャダムヌーン通りを西へ
- ワット・チェディルアン — 巨大な崩壊チェディを見学(30分)
- 徒歩5分で 三王像広場 を通過
- ワット・プラシン — ライカム礼拝堂の壁画をじっくり(30分)
- 北へ徒歩15分で ワット・チェンマン — 象の仏塔と古仏を拝観(20分)
- 途中のカフェで休憩
1日コース: 旧市街 + ドイステープ
午前中に上記の半日コースを回り、昼食を旧市街で済ませた後、午後にソンテウでドイステープへ。山頂の寺院を1〜1.5時間かけて拝観し、夕方に旧市街へ戻る。日曜なら夕方からサンデーマーケットへ。土曜ならウアライ通りのサタデーマーケットへ繰り出せば、寺院と市場の両方を1日で堪能できる。
ドイステープは午前中のほうが霧が少なく展望がよいため、体力に余裕があれば午前にドイステープ、午後に旧市街という順番もよい。
旧市街エリアの食事・カフェ
旧市街はチェンマイのカフェ文化の中心地でもある。寺院巡りの合間に立ち寄れる店が多い。
カフェ:
- Akha Ama Coffee — チェンマイ発のスペシャルティコーヒーブランド。アカ族の農園から直接仕入れたシングルオリジンが飲める。旧市街内に2店舗
- Fern Forest Cafe — 旧市街北西部の緑に囲まれたカフェ。タイ料理から洋食まで幅広いメニューで食事利用にも向く
- Fahtara Coffee — 旧市街北側のランナー様式の木造建築を改装したカフェ。雰囲気が抜群によい
食事:
- カオソーイ: チェンマイ名物のカレーヌードル。旧市街の食堂やマーケットの屋台で60〜80バーツ程度
- サイウア: 北タイ風ハーブソーセージ。マーケットの屋台で手軽に買える
- カオカームー: 豚足の煮込みご飯。チャーン・プアック門の屋台街が有名
- Dash! Teak House — ランナー様式の古民家レストラン。北タイ料理を洗練された形で提供しており、外国人旅行者にも食べやすい味付け
旧市街の食堂は1食50〜100バーツ程度、カフェのコーヒーは60〜120バーツが相場。マーケットの屋台なら30〜60バーツで腹を満たせる。
更新履歴
- 2026-03-21: 初版公開