リスボンの坂の街・路面電車

7つの丘の上に築かれたリスボン。「セプテ・コリーナス(sete colinas)」と呼ばれるこの地形が、この街の魅力の核心を作り出している。石畳を軋みながら急坂を駆け上がる黄色い路面電車(エレクトリコ)、丘の上から眺めるテージョ川の輝き、アルファマの迷路のような路地——これらはリスボン以外では体験できない唯一無二の光景だ。

28番トラム(E28)——リスボンの象徴

1914年に開業し、1930年代製の木製車両が今も現役で走り続けるリスボン最古のトラム路線。全長約7km、Martim Monizから出発し、アルファマの急坂、バイシャの繁華街、バイロ・アルトの丘、エストレラ聖堂の前を経てPrazeresの墓地まで走る。

ルートと主要停留所

停留所名 主な見どころ 乗降のポイント
Martim Moniz 移民市場、モアリア地区 始発駅(混雑前に確実に座れる)
Graça ミラドウロ・ダ・グラサ、修道院 丘の上からの絶景
Portas do Sol ミラドウロ・ダス・ポルタス・ド・ソル、聖ジョルジェ城 アルファマ観光の玄関口
リスボン大聖堂(カテドラル) ロマネスク建築の傑作
Chiado(Luís de Camões) シアード地区、バイロ・アルト入口 ショッピング・カフェ街
Estrela エストレラ大聖堂、エストレラ庭園 ネオクラシック建築の傑作
Prazeres プラゼレス墓地 終点(静かな葬地)

料金・チケット

  • 車内購入(現金): €3.30(最も高い、お釣りが出ない場合も)
  • Naveganteカードでの乗車: €1.90
  • Vivaviagem(1日乗り放題): メトロ・バス・トラム全て込みで €7.25
  • Lisbon Card(観光パス): 公共交通乗り放題 + 主要スポット入場料込み。24時間€22、48時間€37、72時間€45

混雑と攻略法

28番は世界中から観光客が押し寄せ、日中は乗車困難なほど混雑する。

攻略法:

  1. 始発(Martim Moniz)から乗る: 朝7〜8時台ならほぼ座れる
  2. 西側(Camões〜Prazeres)から乗る: 観光客の少ない区間で、空席が多い
  3. 逆方向を狙う: Prazeres発でMartim Monizへ向かう便は朝夕の通勤客はいるが観光客は少ない
  4. スリに注意: 混雑時は必ずバッグを前に。スリチームが28番をターゲットにしている

リスボンの丘と展望台(ミラドウロ)

リスボンの7つの丘の上には合計38ヶ所のミラドウロ(miradouro、展望台)がある。テージョ川と赤い屋根の街並みを見渡す絶景が待ち受ける。

主要ミラドウロ

ミラドウロ・ダ・グラサ(Miradouro da Graça)

  • グラサ地区の丘の上。リスボンで最も絵になる展望台のひとつ
  • 午後になると地元の老人がチェスを指したり談笑している。観光客と地元民が共存する空間
  • 夕暮れ時(17〜19時)が特に美しい
  • アクセス: 28番トラム・Graça停留所徒歩5分

ミラドウロ・ダス・ポルタス・ド・ソル(Miradouro das Portas do Sol)

  • アルファマを見下ろすテラス展望台。カフェと土産物屋あり
  • アルファマの白い家々と聖ジョルジェ城が重なる代表的な景色
  • アクセス: 28番トラム・Portas do Sol停留所直前

ミラドウロ・ダ・セニョーラ・ド・モンテ(Miradouro da Senhora do Monte)

  • リスボンで最も標高が高い展望台。橋(4月25日橋)まで見える全方位パノラマ
  • 地元民が多く、観光客は少なめ。静かに景色を楽しめる穴場
  • アクセス: Intendente駅から徒歩15分 or 28番Graça停留所から徒歩8分

ミラドウロ・デ・サンタ・カタリーナ(Miradouro de Santa Catarina)

  • バイロ・アルトとCais do Sodréの間の丘。若者・ミュージシャンが集まるカジュアルな展望台
  • 夕方になるとギタリストが路上演奏を始め、自然発生的なパーティーになることも
  • アクセス: バイロ・アルトから徒歩5分

ミラドウロ・デ・サン・ペドロ・ド・アルカンタラ(Miradouro de São Pedro de Alcântara)

  • バイロ・アルトの小公園に設置された展望台。サン・ジョルジェ城を正面に見る
  • 段々になったテラスに座ってのんびりできる。カフェキオスクもあり
  • アクセス: グロリア線(フニクラ)の上駅から徒歩1分

フニクラ(エレクトリコス・デ・テラ)

傾斜が急すぎてトラムが入れない丘に、フニクラ(ケーブルカー型路面電車)が走っている。

路線 区間 料金 所要時間
グロリア線(Glória) Restauradores〜バイロ・アルト €3.80 or Navegante 3分
ビカ線(Bica) カルモ〜カルモ(Cais do Sodré近く) €3.80 or Navegante 3分
ラヴラ線(Lavra) Restauradores近く〜Intendente €3.80 or Navegante 3分

ビカ線が最もフォトジェニック。急勾配の石畳の坂道を黄色いフニクラが下りてくる光景は、リスボンを代表する写真スポット。

リスボンの主な丘と地区

アルファマ(Alfama)

リスボン最古の地区。ムーア人支配時代の面影が残る迷路のような路地。

  • 聖ジョルジェ城(Castelo de São Jorge): 丘の頂上に立つ中世の城。€15(成人)。城壁からの360度パノラマが絶景
  • ファドの故郷: アルファマはファド発祥の地とされる。夜になるとライブハウスから旋律が聞こえる
  • 迷宮散策: GoogleMapsを捨てて路地を歩くこと推奨。ギターの音、洗濯物が干された細い路地、急階段——これがアルファマの真骨頂

グラサ(Graça)

アルファマの北に位置する庶民的な地区。観光客が少なく地元の生活感がある。

  • グラサ修道院: ウルスリーノ会の旧修道院。現在は軍施設
  • グラサ市場: 毎週土曜に開催。地元民が集まるローカル市場

シアード(Chiado)

リスボンの文化・ショッピングの中心地。カフェやブティック、書店が並ぶ。

  • A Brasileira: 1905年創業の老舗カフェ。ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアの銅像が外に鎮座
  • カルモ修道院(Convento do Carmo): 1755年の大地震で破壊された後、壁と柱だけが残された廃墟美術館として保存。€5

バイロ・アルト(Bairro Alto)

「高い地区」の名の通り、丘の上に広がる。昼は静かな住宅地、夜はリスボン最大のバーエリアに変貌する。

エストレラ(Estrela)

落ち着いた高級住宅地。イギリス人コミュニティが多く住む。

  • バジリカ・ダ・エストレラ: 18世紀のバロック建築の傑作。内部の大理石の精巧さは圧巻。無料
  • エストレラ庭園: リスボン最古の公共庭園。ファミリーやカップルが憩う

石畳(カルセタ・ポルトゲサ)の歩き方

リスボンの路地は「カルセタ・ポルトゲサ」と呼ばれる黒と白の石灰岩を手で組み合わせた石畳で覆われている。芸術的に美しいが、凹凸があり、濡れると非常に滑る。

石畳対策:

  • スニーカーまたはグリップ力のある平底の靴を推奨
  • ヒールは禁忌(特に急坂)
  • 雨天時はさらに注意。石灰岩は濡れるとガラスのように滑る
  • 車椅子・ベビーカーは石畳エリアでは非常に困難

旅行者向けTips

  • 28番トラムは2つの楽しみ方がある: 「交通手段」として街を移動する使い方と、「観光乗り物」として景色を楽しむ使い方。後者なら東側(Martim Moniz〜Portas do Sol)に乗るだけで十分
  • 電動トゥクトゥク(eco-tuk): 丘を効率よく回りたいならリスボン名物の電動トゥクトゥク観光ツアーがある。1〜2時間€15〜30/人。急坂も楽々、プライベートガイド付きも多い
  • ミラドウロの夕暮れ時(日没30分前): アルファマとテージョ川がオレンジ・ゴールドに染まる。ポルタス・ド・ソルかグラサで場所取りを忘れずに
  • 登山アプリ「AllTrails」: リスボン市内の自由散策用ルートが掲載されている(「Lisbon hills walk」で検索)
  • フニクラのNavegante割引を使う: 単体€3.80だが、Naveganteカードを持っていれば€1.90で乗れる。観光パスポートなら無料
  • アルファマ散策の始発は朝9時前が理想: 午前中は地元の生活感が残り、観光客も少ない。午後はツアー客で溢れる

サンタ・ジュスタのエレベーター(Elevador de Santa Justa)

1902年建設、カルロ・ポンソーニのネオゴシック設計によるエレベーター。バイシャの低地とカルモ広場(上部)を結ぶ、リスボン名物の鉄骨建造物。

項目 内容
料金 €5.30(往復)/ Naveganteカードなら€1.90
運行時間 7:00〜23:00(季節によって延長)
混雑 平日午前〜正午が最もスムーズ。土日は1時間待ちになることも
頂上の展望台 別途 €1.50(カルモ修道院廃墟と屋根が眼下に広がる)

攻略法: エレベーターに乗らずにカルモ修道院前の急坂(Rua do Carmo)を徒歩で登り、帰りにエレベーターで降りると行列を最小化できる。

リスボン徒歩観光モデルコース(半日)

時間 スポット 備考
9:00 Martim Moniz 駅から28番トラムに乗車 早朝が空いている
9:20 Portas do Sol で下車、アルファマ散策 ミラドウロで朝の写真
10:30 リスボン大聖堂(Sé)見学 入場無料(内陣は€4)
11:00 バイシャに向かって坂を下る 石畳の細道を歩く
11:30 サンタ・ジュスタのエレベーターで上へ カルモ修道院廃墟を観覧(€5)
12:00 シアード地区でランチ A Brasileira でコーヒー(€1.60)
13:30 グロリア線フニクラでバイロ・アルトへ Naveganteで€1.90
14:00 サン・ペドロ・ド・アルカンタラ展望台 サン・ジョルジェ城を正面に

ポルトガル語フレーズ(移動・観光)

場面 フレーズ 発音目安
「〜はどこですか?」 Onde fica ~? オンジ フィカ〜?
「28番トラムは何番乗り場?」 Qual é a paragem do elétrico 28? クアル エ ア パラジェン ド エレトリコ ヴィンテ オイト?
「1枚切符をください」 Um bilhete, por favor. ウン ビリェーテ、ポル ファヴォル
「すみません、通してください」 Com licença. コン リセンサ
「ありがとう」 Obrigado(男性)/ Obrigada(女性) オブリガード/ダ

ベレン地区(トラム15Eで行ける)

アルファマ・バイシャから西へ約6km。トラム15E(Cais do Sodré発)またはバス714番で約30〜40分。

スポット 特徴 入場料
発見のモニュメント(Padrão dos Descobrimentos) 大航海時代の探検家たちを称えた巨大モニュメント 外観無料、内部€10
ジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jerónimos) 世界遺産。マヌエル様式建築の最高傑作 €10(日曜午前無料)
ベレンの塔(Torre de Belém) テージョ川に突き出した16世紀の要塞。世界遺産 €6
パステル・デ・ベレン(Pastéis de Belém) 1837年創業のエッグタルト専門店。1個€1.35。行列必至だが回転が速い

更新履歴

  • 2026-03-25: ベレン地区、サンタ・ジュスタのエレベーター、徒歩モデルコース追加
  • 2026-03-24: 初版公開